クルーズ船で働く-豪華客船のクルー生活あれこれ-

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クルーズ船内の感染症対策を現役クルーズ船クルーが紹介します。

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2020年2月現在クルーズ船、ダイアモンドプリンセスの新型コロナウイルス集団感染が世間から騒がれています。

 

そんななか、乗組員への感染対策について問題視するようなニュースを目にしました。「乗組員はマスクや消毒液を手渡されているが、専門の訓練は受けていない」とアメリカの専門家が発言したようですが、今回はクルーズ船クルーの私が現在勤務中の会社を例にクルーズ船の感染症対策についてご紹介します。

 

 

感染症が広がりやすいのはわかりきっている

船は閉ざされた空間で、窓も少なく、空気も感染しているうえに、集団で生活し、日々何人もの乗客、乗員と接触しなければならないため、感染症が広がりやすいのは残念ながら事実です。

 

風邪とか、流行ります。一人オフィスで調子悪そうな人がいると、2、3日後には、数人同じ症状の人がでてきます。その人たちが治ると、別の人が調子悪くなり、そしたら別の部署でも同じようなことが起こる、ということを1回の乗船中に2、3回は経験します。

 

予防対策

船内にはいたるところに消毒アルコールディスペンサーが設置されています。トイレの出口、レストランの出入り口、ロビー、バーの出入り口、乗降口付近。また個人用のアルコールのハンディスプレーがある船もあります。

 

手洗い、消毒の重要性を訴え、推奨するビデオが客室内のテレビで定期的に放送されます。加えて、こまめに手洗い、消毒するようにうながす船内アナウンスでも呼び掛けています。

 

報告の義務がある

クルーの場合、下痢、嘔吐、インフルエンザの症状はGIと呼ばれ、症状がでてすぐに船医か看護師に報告する義務があります。症状が出たのに暫く放置していた場合などすぐに報告しなければWarningという警告を貰います。(このWarningは3回もらうとDismissいわいるクビになります。)

 

Isolation(隔離)

医務室で診てもらい、軽い症状ならば薬を処方されるだけですし、医師の判断で、Medical Off といって病欠にされることもあります。また、医師が感染の恐れありと判断するとIsolationといって隔離されます。もちろんGIの場合は即刻Isolate(隔離)されます。

 

Isolated(隔離)の状態になると、ルームメイトが居る場合は病人本人がクルーキャビンか客室の空き部屋に隔離されるか、ルームメイトが他の部屋に一時的に移動させられます。

医務室に経過観察に行く以外部屋からの外出は許されません。もちろん、食堂に行くことも許されませんので、水も食事もが部屋まで運ばれます。もし、用もなく隔離部屋以外の場所にいることが見つかれば、ペナルティをもらいます。

 

乗客に関しても同じですが、さすがにルールを破ってもペナルティは貰いませんが、注意は受けるでしょうね。

 

Public Helth Questionary (問診票)

乗船前に記入しなければいけない健康に関する問診票です。数日前に特定の症状がでたか、周りにそういう人がいたか、妊娠中かなどごく簡単な質問で、健康体であれば、全ての項目がNOとなります。

YESにチェックがあった場合、船医の判断で乗船させない場合もありますし、乗船したけど即Isolet(隔離)されることもあります。

 

 

Code Red(感染症対策措置)

感染症が広がった場合対策措置が置かれます。船によって呼び方は異なるかもしれませんが私がいるところではCode Red と呼ばれ、レベルが1~3まであります。

乗客乗員の〇%以上にこの症状がでたらCode Red レベル1、〇%以上でレベル2,3という指標があるそうです。

 

レベル1

公共スペースや廊下などの噴霧消毒の頻度が増す。

レストラン、厨房の大掃除の頻度が増す。

バーで出てくるおつまみの供給ストップ。

通常テーブルに置きっぱなしのメニューがはずされる。

レストランのシルバー食器が使い捨てのものになる。

職場エリアの定期消毒。

クルーイベントの中止。

 

レベル2

レベル1に加え、

噴霧消毒の頻度がさらに増す。

マスクと手袋を装着した係員しかビュッフェの食品を取り扱うことができなくなる。

定期的にキャビンの消毒をさせられる。

 

レベル3

クルーズ続行不可となり、乗客を降ろし、船全体を消毒する。

 

このCode Redは一定期間感染者が現れなけば船医等の担当者によって収束します。

私はレベル1と2を経験したことがあります。業務に関することでいえば、1時間おきにデスクを消毒したり、お客さんが使ったペン1本1本その都度消毒したり、かなりストレスが溜まります。

 

まとめ

会社もクルーも感染症が船内で流行しやすいのは重々承知なのです。なので予防措置も対策措置もしっかりあり、乗組員も気を使っているのです。

おそらく、手洗いや消毒に対する意識は通常陸で生活している人よりもかなり高いです。

 

今回はおもに私が乗務する船をもとに紹介しましたが、多少のバラつきはあれど、他のクルーズ船も同じようなシステムがあるはずです。

 

あまり内情が知られていないので、批判されがちですが実はかなりしっかりした基準や対策もあり、乗務員の意識も高いのです。

 

因みにクルーやお客さんの怪我や病気が船内の医務室の手におえない場合の措置についてはこちらで紹介しています。

racheal-grolia.hatenablog.com